特許権には財産的価値があるので、売ったり貸したりすることができます。
ただし、通常の有体物と違って、同時にたくさんの人が使うことが出来てしまうので、特殊な決まりがあります。
自分が特許権を貸す側になったときも借りる側になったときも不利な契約を結ばないようにどんなライセンスにするか吟味してください。
順番にご説明いたしますね。
1つ目は、専用実施権(特許法77条)です。
一言で言うと、実施していいよと言われた人だけがその特許発明を実施できる権利です。
特許権者すらも実施できなくなる強力な実施権なんですよ。
受けるメリットは自社で研究開発をしなくてもその特許発明を自社だけが独占的に実施できるということです。
デメリットは、市場を監視する必要があることと他社からの警告や訴訟の負担が増えることです。
ライセンサー(許諾を与える側)のメリットはライセンス相手が一人なので管理が楽になることと、通常実施権よりも高額のライセンス料がもらえることです。
デメリットは、自社も実施できなくなってしまうということです。
専用実施権
77条 特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。
2 専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する。
3 専用実施権は、実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
4 専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができる。
5 第73条の規定は、専用実施権に準用する。
許諾を受けた人(特許権者も実施可能)なら何人でもその特許発明を使えるようになる権利です。地域や期間を限定することもあります。
ライセンサーのメリットは、自社で開発した特許を事業化出来なかったり市場を開拓できないときに有効です。
デメリットはライセンス料が低いことです。
ライセンシーのメリットは、自社が開発したものではない発明でも実施出来ることですが、独占的に実施することはできませんし、権原なく勝手に実施している者に対し、差し止めや損害賠償の請求をすることは許されません。
ライセンサーは、標準化を進めるために、無料で実施許諾をすることもあります。
通常実施権
第78条 特許権者は、その特許権について他人に通常実施権を許諾することができる。
2 通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を有する。
他にも、先使用権(特許法79条)のような法定通常実施権というものもあります(特許法第35条第 1 項、第79条、第80条第 1項、第81条、第82条第 1 項、第176条)。
法定通常実施権
職務発明による法定通常実施権(特許法35条)、先使用権(特許法79条)、無効審判の請求登録前の実施による通常実施権(特許法80条)、意匠権の存続期間満了後の通常実施権(特許法81条)
互いに相手の特許が参入障壁となり実施できないときに実施許諾し合って特許発明を使用するライセンス方法です。ただ、お互いの特許の価値を精査できない場合に利益配分がうまくいかない場合があります。
たいていは、価値の低い方の特許の持ち主が価値の高い特許の持ち主に足りない分を支払うという形をとります。
特許権等の知的財産権を取っていない知財を実施許諾します。
特許権のような公的な権利がないので、秘密保持契約が必須になります。ただし、信頼関係が築けていれば、継続的に取引が続けられます。
通常実施権のライセンスのときにおまけにつけられることも多いようです。
複数の特許権者が製品に関与する特許を持ち寄って、権利の特定は行わず技術分野やライセンス対象製品を特定して、これに関する権利すべてを包括的にライセンスする方法です。
設計自由度の確保を目的としている場合に行われます。
家電業界でよく行われています。
一つ一つ個別にライセンスするより安価で効率よくライセンスができますが、どの会社もいらない特許ばかりプールに出したり、なかなかうまく機能していません。
一定の条件を満たせば特許を自由に使えます。無償の例として有名なのがリナックスです。
「専用実施権を設定してください」「わかりました」だけで設定登録していない状態のときはどうなるの?
ですから、法改正で通常実施権の当然対抗という制度ができました。