資金力・信用力に乏しいベンチャー企業は、信用を得るためにも資金を得るためにも知財を活用したいものです。

でも、それ以上に、「スピード」を重視してください。

身軽さと実行力がベンチャー企業の最大の強みです。そして、会社を影から支える知財を有効活用して一気に飛躍してください 。
スタートアップと知的財産

チーたん
ぼくは、いずれ起業したいと思っているのだけど、起業するときも知財のことは考えた方がいいの?

ふっくん
もちろんです。むしろ、資産のないベンチャーほど、知財を活用すべきでしょう。

ふっくん
知的財産権は売ったり貸したりして資金の足しにすることもできますし、知財を担保に融資を受けることもできます。

まだブランド力のないベンチャー企業の場合は、商標権をライセンスすることはできません。したがって、新規な発明や斬新なデザインについて特許権や意匠権を取るべきでしょう。

特許はビジネス上の印籠のようなものです。

特許があれば信用力が増し、商談がスムーズに進みます。

ふっくん
特許は敷居が高いと思うかもしれませんが、特許権がなければ門前払いでビジネスが前に進まないこともよくあります。

チーたん
たしかに、日本では中小企業やベンチャー企業の信用力は低いから何か公的に認められた権利がないとビジネスの話は進みにくいだろうね。

熱意だけではベンチャーキャピタルはなかなかお金を出したいとは思ってくれないだろうし


ふっくん
ベンチャー企業は資金的な余裕がないため、無駄な出願はできません。

ふっくん
ビジネス計画上で必要なものだけを出願し、100%権利化することを目指してください。
もちろん、コア技術だけでなく周辺特許も権利化し、強固な特許網を築いてください。
強力な特許網を築ければ、大企業も対等な立場で商談に入ってくれます。

チーたん
出願前に特許調査をしなくてはいけないんだよね。時間的にも金銭的にも負担だなあ

ふっくん
ベンチャー企業は特許調査はしなくてもいいでしょう

チーたん
え?何で?特許調査は大事だって言っていたじゃないか!

ふっくん
一般論として言ったまでです。資金力の限られているベンチャー企業は気にしなくていいと思いますよ。

ふっくん
それよりも、スピードを重視すべきです。身軽にどんどん行動をおこしてください。

たとえ特許権を侵害していたとしても賠償金を払えばいいのですし、特許権を有する企業は小さなベンチャー企業のことなど相手にしませんよ。
ベンチャーを相手に訴訟を起こすのは時間的にも金銭的にも割にあいませんから。

チーたん
コンプライアンス重視のふっくんがそんなことを言うなんて意外だな

ふっくん
私の仕事は法律を駆使して中小企業やベンチャー企業の事業を有利にすることですから。
そもそも、新しい切り口でビジネスを始めるベンチャー企業が発明するようなものと同じ技術についてしっかり特許網を築いている企業があるとは思えません。

ふっくん
もしそんな会社があったのなら、そもそもそちらの会社が事業化を進めているはずですから、起業をする前に気づくはずです

チーたん
まあ、特許網といかないまでも、他社特許があると事業がやりにくいことに変わりはないから、事業が軌道に乗って収入が入ってきたら特許権を買ってもいいかな

ふっくん
そうですね。

ふっくん
順調に事業が成長すれば、必ず何らかの知財紛争に巻き込まれます。
創業したばかりのベンチャー企業に数年後の知財リスクに備えて対策をとることも求めるのは酷かもしれませんが、早い段階で特許権を始め知的財産権で身を固めてほしいものです

チーたん
知的財産について勉強する前は、特許は時間もお金もかかるから、コストにしか思えなかったよ。

でも、今は考えが変わったよ。


チーたん
予め知的財産権を取っておくことで、将来自社ビジネスが成長して他社の模倣が始まった頃に模倣者を排除してくれるし、適切にマネジメントすれば莫大な収益をもたらしてくれるんだ。

ふっくん
そのマネジメントが難しいのですが、知財マインドが身に付いた今のチーたんなら知的財産を上手く使いこなせそうですね

チーたん
まだまだだよ。知的財産権についてふっくんからずっと教わってきたのに、いまだにわからないことだらけだよ。

ふっくん
経営者は、法律についてはそこまで学ぶ必要はないと思いますよ。他にやるべき仕事は山ほどありますからね。

ふっくん
知的財産権は非常に重要ですが、同時に複雑なので、使いこなすには専門家の力を借りるといいでしょう。経営のことも分かる弁理士や弁護士を社員として雇ってもいいですし、外部の人にコンサルしてもらってもいいでしょう

チーたん
そんな人材を雇う余裕はないから、ふっくんに頼るよ。今後ともよろしく!(笑)

ふっくん
チーたんにお願いされると断れませんね(笑)。

ふっくん
さて、特許権取得の話に戻りますが、起業したばかりの頃には、お金もないので、商標権を取ったら、あとはとりあえず特許出願をしておくだけにしてみてはいかがでしょう。数十万円あれば済みます。

チーたん
えーっと、特許出願しただけでは特許権は取れないんだよね?

ふっくん
そうです。審査請求をするまでは、審査は始まりません。

ふっくん
この特許庁に対してする審査請求というのが非常に高額なので、出願してから一年程度はしなくてもいいでしょう。

ふっくん
特許は早いもの勝ちなので、先に出願したという証拠を残すために、とりあえず出願だけでもしておくということが大事です。
ただし、気をつけなくてはいけないのが、権利範囲の狭い出願をしてしまうと、後に補正をしても権利範囲は狭いままで取得しても意味のない特許になってしまうので、始めて出願をするときは、必ず弁理士の力を借りましょう。

ふっくん
ここでケチってしまうと、全てが水の泡になってしまうので、相手がベンチャーだからといって軽視せず、将来を見据えて強い権利を取ってくれる優秀な弁理士にお願いしたいですね。

ふっくん
なお、出願をしておくだけでもベンチャーキャピタルに好印象を与えることができますし、権利が欲しくなったらその頃に改めて審査請求をすればいいのです。

チーたん
さっき、ふっくんは出願してから一年って言ったけど、何で一年?審査請求は出願日から3年くらいはできるんじゃなかったっけ?

ふっくん
よく勉強していますね!

ふっくん
私が一年と言ったのは、優先権(特許法41条と外国出願)の期限が一年だからなのです。

優先権を主張すれば、製品・サービスのリリースから 1 年の間の出来事を反映させて、事業を的確に保護するための特許出願を作り上げることが出来るのです。


チーたん
ふっくんが顧問になって、忘れそうな頃に教えてよ

ふっくん
私も知財管理を手伝いますが、経営者がある程度知財について学ぶことは知財経営を進める上で効果的ですよ。

社内全体に情報管理体制の重要性を認識させることができますし、他社との売買を始め、提携や共同発明をするときには、営業秘密の漏洩という問題が出てきます。

そのときに、経営者が秘密保持契約を締結する等、知財管理をしっかりしようと意識していれば、社員も自然に知財を重視するようになります。


ふっくん
また、侵害者に対して適切に権利行使をしていけば、知財を武器に戦う強い会社というイメージを対外的に築くことができるので、最初からこの会社の特許は真似しないようにしよう、と他社が恐るようになるでしょう。

チーたん
わかったよ。勉強する! でも、まだまだ自信がないから、出願するときは手伝ってね

ふっくん
いいですけど、チーたんが会社を辞めたらあいぴーが悲しみますよ

チーたん
ぼくだって悲しいけど、会おうと思えばいつでも会えるんだから、若いうちにやりたいことに挑戦するんだ!

ふっくん
希望に溢れた起業家って素敵です。
夢を実現するために、がんばってくださいね!