一昔前、ビジネスモデル特許という言葉が流行りました。ハブ・アンド・スポーク特許に始まり、アマゾンのワンクリック特許やマピオン特許が有名です。
特に、アマゾンの1クリック特許のような単純なものに特許を与えられるのなら、だれでも特許を取りたくなってしまいますよね。
でも、ビジネスモデル特許は簡単に取れるものなのでしょうか?
早速特許を取るよ!
特許を取れるのは、自然法則を利用した発明だけだと特許法の基礎で言いましたよね?
自然法則以外の法則は特許の対象となる発明には当たりません。例えば、経済法則や人為的な取り決め、数学上の公式、人間の精神的な活動といったものは自然法則を利用した発明には当たりません。
ビジネスモデルはこのうち、人為的な取り決めや人間の精神的な活動に当たってしまうので特許にはならないのです。
コンピュータを使ったビジネスモデルの発明みたいのが特許登録されてるじゃない
ITはコンピュータや通信機器等を使うので、自然法則を利用しているといえます。
ですから、ITを利用したビジネスモデルなら、自然法則を利用したもの、すなわち発明にすることが可能になります。
ビジネスモデル自体は特許にはなりませんが、一部分にビジネスモデルを含んでいても、全体として自然法則を利用していれば、特許発明になるというわけです。
ITじゃなくてもいいんじゃない?
登録されたものもありますが、かなり微妙な権利です。
「全体として自然法則を利用」とはどんなことか、詳しくは特許庁の審査基準をご覧下さい。
「情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」と発明に該当して特許を取れる可能性があるらしいんだけど・・・
どういうこと?
これだけではさっぱり分からないでしょうから、審査基準に載っている具体例を見るといいですよ。
それを見てもよくわからなかったら、ビジネスモデル特許なんて取らない!というのも一つの手段です。
だって、だれでも思いつくようなこと、かつてはアナログでされていたことをITで実現しているだけですよね。
そういうビジネスモデルについて特許登録を受けてしまうと、20年間他の人が使えなくなってしまうわけですから、日本の産業の発達にマイナスになります。
ですから、素晴らしいビジネスモデルを思いついたら、特許権で守り固めるのではなく、別の手段を使って真似されないようにするのです。
商標権を取ってブランディングをするというのは基礎中の基礎ですが、他にも参入障壁の作り方はいろいろあります。
例えば、他社が真似をするとカニバリズムを起こしてしまうようなビジネスモデルを作ります。
例えば、スポーツジム業界で、大手スポーツジムが富裕層や働く女性をターゲットにしているとします。
そんなときに、「誰でも気軽にエクササイズが出来るように、安い場所を選んで最低限の設備だけのスポーツジム」をビジネスモデルとしてスポーツトレーナーが参入してきたとします。
すると、大手スポーツジムとしては、ターゲットとしていなかった「エクササイズにそれほどお金をかけたくない女性」を奪い返そうとして値引きや設備の撤去を行うと、既存の顧客の満足度を下げてしまうことになります。
また、エクササイズの例で言えば、大手スポーツ事務が「休眠会員が多ければ多いほど儲かる」ビジネスモデルだとすれば、「休眠会員は作らない。確実に痩せてもらう」をビジネスモデルにすれば、やはり、大手スポーツジムは参入しづらいわけです。
それらを利用すれば、安価に参入障壁を築けます。
特許をとっている時間やお金がもったいない、と思ったら、無理にビジネスモデル特許は取らなくてもいいでしょう。