知的財産権の共有や共同出願については、その特殊性から理解が難解な部分です。

「結合著作物」や「共同著作物」といった用語からだけでは理解することが困難でしょうから、具体的な場面をイメージしながら学んでください。

あいぴー
うちのアマチュア小説サークルの友達が、小説のネタに困っていたから、うちが、こんなテーマはどうかとかいろいろ提案したんよ。
そしたらな、その子が小説を書き上げて、それが入選したんや。

この場合、著作者はその子だけやなくて、うちも共同著作者になるんかな?


ふっくん
あいぴーはその小説の創作にどの程度関わっているんですか?

あいぴー
うちは口出ししただけやで。書いてはおらん

ふっくん
では残念ながら共同著作にはなりませんね。ヒントやテーマを与えただけの人は共同著作者ではありません。

その小説の創作に従事していなくては著作者とはいえないのです。

2人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものを共同著作物といいます(2条1項12号)。


ふっくん
すなわち、著作物が複数の人による共同の作品であると認められるためには、

①2人以上の者が創作した著作物であって、

②その2人以上の者の創作行為が共同しており、

③各人の寄与を分離して個別的に利用することができないことが必要です。

以上の要件に当てはめてみると、あいぴーの行為は”創作”ではないのであいぴーは著作権者にはなりません。

共同著作者になるためには、お友達が書いた小説の文章を補充訂正するなど具体的に関与していなければいけません。


あいぴー
なんや、そうなんか・・・

ふっくん
反対に、あいぴーが小説の内容を口で語って、それをお友達が書き留めた場合は、著作権者はあいぴーだけです。

後述を記録しただけの人は著作権者にはなりません。

あいぴー
うちが小説の第一章を書いて、友達が第2章を書いたら共同著作物になるん?

ふっくん
その場合は、結合著作物になります。

先ほど述べた③の要件を満たしていないからです。

③の要件を満たすためには、たとえば、二人の人が一緒に彫刻を彫ってどちらがどの部分を彫ったか分からず、分離して利用することができないことが必要です。


あいぴー
うちが小説を書いて、それを読んだ友達が漫画を描いたら?

ふっくん
お友達の漫画はあいぴーの小説の二次的著作物になります。

あいぴー
なんか複雑やな~

ふっくん
ここら辺は厳密に覚える必要はありませんよ。
お金のことでもめて裁判になったら弁護士に任せればいいんですし

あいぴー
もめたくないけどな(- -;)

チーたん
ねえねえ、共同著作物である小説が無関係の人によって無断で出版されている場合、各共同著作者は、単独で差止めを請求できるの?
ふっくん
はい。できますよ。著作権法117条に共同著作物の各著作者又は各著作権者は、他の著作者又は他の著作権者の同意を得ないで、差止請求(著112条の規定による請求)をすることができると規定されていますから。

共同著作物等の権利侵害

第百十七条 共同著作物の各著作者又は各著作権者は、他の著作者又は他の著作権者の同意を得ないで、第百十二条の規定による請求又はその著作権の侵害に係る自己の持分に対する損害の賠償の請求若しくは自己の持分に応じた不当利得の返還の請求をすることができる。
2 前項の規定は、共有に係る著作権又は著作隣接権の侵害について準用する。

チーたん
じゃあ、共同著作物が無関係の人によって無断で改変された場合に、共同著作者のうちの一人が、自分の持分に対する損害賠償請求を単独で出来る?
ふっくん
実はそれについては著作権法上明文の規定がないのです。

著作権法117条1項をよく見てください。
共同著作物の各著作者又は各著作権者は、他の著作者又は他の著作権者の同意を得ないで、その著作権の侵害に係る自己の持分に対する損害の賠償の請求若しくは自己の持分に応じた不当利得の返還の請求をすることができると規定されているだけですよね。

チーたん
本当だ!
類似必要的共同訴訟と考えるべきかな。固有必要的共同訴訟と考えるべきかな。
あいぴー
・・・お取り込み中申し訳ないんやけど、うちには二人が何を話しているのかようわからんわ。
ふっくん
すみません。私とチーたんが話していることは弁理士試験を受けたり法学部で勉強している人でない限り覚えなくていいですからね。