資格試験受験予備校などが、「学歴がなくても大丈夫。資格をとって一発逆転!」とサービスを売り出していることがあります。
これに乗って弁理士試験講座に申し込んだ人からたまにご相談をいただきます。
「本当に合格できるのか心配になってきました。合格したとしても転職先はあるのでしょうか」と。
特に多いのが、文系で30歳前後の方からのご相談です。
ご質問に対し私がほぼ全員にお伝えしている言葉は以下のようなものです。
「多額の講座受講料を支払い、もう長いこと勉強を続けていますよね。途中でやめられるのならやめてしまっても良いと思います。何年も続けてからやめるより無駄を省けます。
でも、途中でやめられませんよね?ならば合格するまで必死で勉強してください。
転職活動をして先に特許業界へ入ってみるのも良いと思います。」
私には輝く将来を約束してあげることはできません。
でも、未来が真っ黒ということもないでしょう。
努力が必ず報われる社会ではありませんが、努力は悪ではありません。努力をしたのに報われないからといって癇癪を起こすのは良いことではありませんが、努力自体は良いことです。
なかには、「大手受験予備校の人から冷笑された」という方もいらっしゃいました。
「こいつは受からないだろうな」と思いながらも受講料を献金してくれる良いカモと見られているのでしょう。
残酷です。
しかし、このように見下され悔しい思いをしたからこそ奮起できるとも言えます。
表面的に甘い言葉をかけるだけの人よりは良いかもしれません(他人を見下しているので人間的には決して尊敬できませんが)。
私には「誰でもがんばれば報われます」なんて口が避けてもいえません。
この世は理不尽で残酷だからです。努力の他に運も重要だからです。
半年〜1年程度の勉強で弁理士試験を投げ出しても良いと思います。それができるのならば、本気になれる別業界を探すだけです。
大抵の人はズルズルと続けてしまうと思います。
一番の悲劇は、「受かったけれど就職先がない」ことです。
これは非常に苦しいことです。
ただ、この手の人は、ある種、達観してしまっているというか人格的に非常に練れている方が多いように感じます。試験勉強だけをしていたわけではないのですね。自分とずっと戦っていたので人格的に成長を遂げたのです。
なので、「転職に役立たないなら資格に意味はない」そう考えるべきではありません。
今後は、資格の枠を取り払い、心の成長を遂げた人間が活躍できることが増えるでしょう。
とはいえ、資格はとったけれど転職に役立たないというのはあまりにも辛いです。
したがって、弁理士試験の勉強を始める前に以下のことを考えておいてください。
理系の知識はあるか
大卒である必要はありません。高卒でも理系なら大丈夫です。(ちなみに昔は大卒であることが受験要件でした)
文系の場合はIT系の資格を先にとってみてもよいでしょう。(このサイトの別記事で説明しています)
商標を専門にすることは、合格者増の影響で難しめです。
謙虚で素直か
一流大卒の人でもたまに特許事務所への転職に失敗します。その理由は、「あまりにも常識がない」「わがまますぎて場を乱す」等問題を抱えているからです。
一般企業の場合、性格的に問題のある人は就職に苦労します。たとえ就職しても続けられず辞めてしまいます。
そのような「学歴だけは高いけれど人間性が理由で仕事を続けられない」タイプの人が士業には多いのです。
この手の人相手に苦労していた特許事務所だと、謙虚で素直な人がきただけで喜んでくれます。
人間力を評価してくれる組織もあるのです。
年齢が若いか
若ければ若いほど有利です。22歳で人生を捨てて無差別テロに走ってしまった男性の話がニュースになりましたが、22歳なんて人生をいくらでもやり直せる年齢です。
これが10歳年上だとかなり絶望的です。資格試験勉強に費やす時間とお金を考えると、別の仕事を頑張ってプライベートを充実させるほうが良いでしょう。
残酷ですが、資格で一発逆転をするにはある程度の若さが必要です。
ただし、ウルトラQがあります。即独(合格後すぐに独立)という方法が残されています。
しかし、それには集客力も必要なので就職するより難しいかもしれません。
個人が集客するのは容易ではありません。手っ取り早く稼ぐには炎上マーケティングに頼るしかありませんから。
しかし、一度炎上マーケティングをしてしまうと、もうその業界ではやっていけません。そのような所長の下にはまともな人が集まってこないので組織は大きくならないのです。
自殺や犯罪をするくらいならやっても良いでしょうが、人格と生命の安全を危険に晒す炎上マーケティングは決してお勧めしません。
以上色々と書いてしまいましたが、「理系の知識がある若い人で、心の底から人生を変えたい」と思う人にはぜひ弁理士試験の勉強を頑張って欲しいです。決してキラキラしていない地味な世界ですが、学歴にかかわらずコツコツ頑張れる人には向いています。