知財業界に関わらず、仕事において重要なのは、「仕事内容」です。それが自分に向いているか、楽しんでできるか。
給与は二の次です。
なぜなら、目先の低い給料は後になって取り返しが効くからです。
20代・30代(場合によっては40代まで)のうちは、まずは、自分の人材価値を高めることが重要です。
この人材価値は2つの要素で構成されています。
要素の一つ目は、「能力」。
これは、何らかの仕事をすることの出来る力です。
要素の二つ目は、「経験」。
この経験を積むためには1つ目の「能力」を示す必要があります。
それによって、経験を積み上げていくことが出来るようになります。
そして、「経験者」になれば、あなたの人材価値が高まり、転職も有利に行えるようになります。
ここで注意したいのが、「資格」は能力の証明にはならないということです。
逆に、資格をとるのに時間をかけることにより、回り道になってしまう可能性が高まるのです。
また、資格は将来の可能性を狭めます。
どうしても取った資格を活かそうとして資格にしがみついてしまうからです。
資格取得後に全く関係のない仕事をしてもよいのですが、資格を取ったことは「単なる自己満足」に終わります。
このように資格は有効な場面も多い反面、よく考えないで勉強を初めてしまうと恐ろしいことになります。
特に弁理士資格のような難関国家資格は取得が難しいため、人生の長い期間をかける必要があります。
弁理士試験の勉強を始める前には、「自分は明細書を書くことが好きでこれで生きていきたい」ということを自分で納得することが大事です(特許弁理士の場合。商標弁理士の場合は仕事内容が異なる)。
学生なら何も考えずに弁理士資格をとってもよいのですが、「転職に有利になるように」という理由で弁理士資格を取得しようと考えている場合は注意してください。
弁理士資格を持っていたからといって企業知財部や特許事務所への転職が有利になることは若い人で無い限りありません。
まずは経験を積むのが重要です。
まだ20代で今の仕事が天職でないと感じており知財業界へ飛び込みたいと考えている人や、自分の人材価値が高まったからキャリアアップのために転職したいという人たちは転職をすることになります。
ポジティブな理由であれネガティブな理由であれ、環境が大きく変わる可能性があることから事前にしっかりと準備しなくてはいけません。
以下に知財業界での転職に関する鉄則を7つ挙げました。
十分に考慮してから転職をしてください。
知財転職の鉄則7か条
①今の仕事を続けながら転職活動をする
今の仕事が辛い場合にはすぐに辞めて転職してしまいたいと考えるかもしれません。しかし、まず辞めてから職探し、となるとキャリアに空白期間が生じることから、人材価値が下落します。貯金を食いつぶしていくことから精神的にも焦りが出てきて就職は難しくなってしまいます。
ですから「仕事をしながら転職活動」が基本です。
「いずれ転職したい」のなら情報を得るようにアンテナを張っておきましょう。
「仕事が忙しいから仕事を辞めて弁理士試験に専念する」と考えたとしてもやはり仕事を辞めてしまうことはお勧めしません。
特許事務所では経験者を優遇します。そして、1歳でも若い人材を欲しています。
弁理士試験の勉強をして1年無駄にするよりは、まずは特許事務所に特許技術者として入り、仕事をしながら勉強すべきです。
弁理士資格取得のために会社をやめて受験浪人なんてすべきではありません。
そのような人材はマルチタスクをこなせない印象があるため、人事としてはあまりほしくないのです。たとえ雇ってもらったとしても給与や入社後の待遇にも影響が出てくるでしょう。
また、5000時間勉強に費やせば必ず合格するなんていう保証はありません。
「一発で合格!」なんていう受験予備校の甘い宣伝文句につられ、つい、「自分も!」と思ってしまいますが、「試験勉強を10年続けている」人たちもいることを忘れないでください。その人たちも初めて受けたときには「一発合格だ!」と意気込んでいたのです・・・。
背水の陣を敷くときには、落ちたときのことも真剣に考えてください。「落ちたら死んでやる」なんて短絡的なことを考えるのではなく、その絶望の中でどう立ち直るか、無職を続けてもう一度挑戦するのか等真剣に考えてください。
②自分のスキルは十分か確認する
転職先で求められているスキルをあなたは満たしていますか?もし何か足りないものがあるならスキルアップのために勉強をするのも良いでしょう。
たとえば、今TOEICが700点なら転職までに800点を超えるという目標をたてるのも良いでしょう。
なお、特許事務所へ転職したい場合には弁理士資格は無くとも技術的バックグラウンドと新しいことを吸収していく意気込みを見せれば、特許技術者として喜んで迎え入れてもらえます。
③家族の理解を得る
あなたが独身ならあなたの独断で転職を決めてしまって良いでしょう。しかし、家族や子供がいる場合には話し合ったり、「転職するつもりだ」ということについて話をして理解を得るべきです。
④企業→特許事務所の転職では年俸に惑わされない
たとえば、現在企業の知財部で年収が500万円だとします。特許事務所で年俸600万円を提示されたとして、単純に「年収100万円アップだ!」と喜ぶわけにはいきません。 特許事務所では企業のように福利厚生が充実していることは稀ですし、残業時間も年俸に含まれている可能性があります。すると、実質的には勤労時間が増えたにも関わらず年収は横ばい、または時間給に換算すると減額という可能性もあります。
表面的な金額に惑わされないようにしましょう。
なお、未経験の場合は年収にこだわるよりも、良い環境で経験を積むことを重視すべきです。実力がつけば、次第に年収も上がります。
反対に未経験者にも高い年収を出す事務所の場合、ブラックな環境である可能性があります。安易に就職・転職を決める前にしっかりとサーチしてください。
(ちなみに、企業の人が未経験で特許事務所に特許技術者として入所する場合、年齢に関わらず年収は500〜400万円スタートになると思います。家族もいる人がその年収だとキツくなると思われますが、逆に「それでも将来弁理士としてやっていきたい」と意気込みを見せれば35歳以上でもやる気を買われて採用されやすくなるでしょう。)
⑤転職回数は少ないほうがいい?
これは業界に関わらず言えることです。一箇所に長く勤めていた方が日系企業では高い評価に繋がります。
しかし、20代で初めて就いた仕事が天職である可能性は低いでしょう。職業選択の自由を広げることから、転職は若いうちに一度行い、給与アップなどのためにもう一度行っても良いでしょう。
なお、いくら特許事務所の経験が長くても企業への転職時にはあまり有利に働かないようです。
このように、特許事務所から企業知財部への転職は狭き門なので、転職するならできるだけ若いうち(20代が好ましい)に企業へ行くべきです。
30代半ばになると特許事務所から企業知財部へ行くのは困難です。
なお、特許事務所では転職者だらけです。
人材が流動的ですので、新しい人が入ったと思ったら別の人がいなくなっていたなんて日常茶飯事です。ですから、転職者を部外者扱いするような空気はありません。この点企業知財部よりいいでしょう。
特許事務所では自分に合わなかったらまた転職することができるのです。
経験と資格を持った弁理士の特権です。優秀な人は引き抜きに合いますし、年収アップをしたいなら転職したほうが良いことも多いでしょう。優秀な人材は転職回数に関わらず必要とされます。
弁理士だったら転職ではなく独立という道もありますが、これはかなり大変です。弁理士としての能力ではなく、経営力が必要になりますからね。
⑥転職は若いほうが有利
これも業界に関わらず言えることですね。なお、未経験者の場合はたとえ弁理士資格を持っていても雇ってもらえないことも多いので、いずれ知財業界で活躍したいという野望をお持ちの場合には、若いうちに知財分野に飛び込んでおくべきでしょう。
⑦経験者が有利
特許事務所では、実務未経験で弁理士資格を持っているだけの人よりも弁理士資格を持たない経験者の技術者が優遇されます。
未経験の場合、文系だったら30歳、理系だったら35歳までに特許の世界に入っておきましょう。
そして、最後に、転職に成功するには自分の力だけでなく、「協力者の力」によっても変わるということを覚えておいてほしいと思います。
具体的には私があなたの特許業界へのマッチ度についてお伝えできます。
詳しい情報がほしい場合にはお問い合わせください。